デイビッド・ベッカム
言わずと知れたフリーキックの名手ですね。
2002年FIFAワールドカップ日韓大会を見たことがある方なら、サッカー好きで無くても1度は聞いたことがある名前だと思います。
サッカーに疎い近所のおばちゃんでもベッカムの名前は知っているかも知れません。
サッカーの実力もさることながら、甘いルックスも相まって当時はベッカムフィーバーが起こりました。
日本で大人気だったベッカムですが、もちろん本国のイングランドでも人気プレイヤーでした。
ただイングランド国内での評価は2002年大会の予選まではいい印象を持っている方は少なく、むしろ前回W杯敗退の原因を作った「戦犯」のイメージでした。
そんな「戦犯」のイメージを払拭するきっかけになった1本のフリーキックを紹介したいと思います。
98年ワールドカップ 若さが間違った方向に出る
1975年5月2日にロンドンで生まれたベッカム。地元クラブでサッカーを始めるとすぐに頭角を現し、地元では有名なプレーヤーになります。その噂はビッククラブの耳にも入り、ロンドンのクラブを中心にベッカム争奪戦が勃発。最終的にはマンチェスター・ユナイテッドがベッカム少年の心を射止め、91年にユース生として迎え入れる事に成功します。
ユースへ入団してからメキメキと力をつけ、入団から2年後の93年にプロ契約。一時2部のチームにてレンタルで武者修行をするも世代交代を推し進めていたチーム事情もあり95年にユナイテッドに復帰します。
その後はすぐにレギュラーメンバーに定着。リーグやFAカップ等タイトルを次々に獲得してゆきます。
結果を出していた中、当時23歳の若さでワールドカップメンバーに選ばれたのが98年大会でした。
グループリーグ1戦目と2戦目はベンチで出場機会がなかったベッカムですが、3戦目のコロンビア戦で先発出場を果たし、その試合で直接フリーキックをねじ込みます(これが代表初ゴール)。
続く決勝トーナメント1回戦のアルゼンチン戦でも調子の良さを買われスタメンに抜擢されました。
が
そのアルゼンチン戦で事件が起こります。
百聞は一見に如かず
以下動画をご覧ください。
アルゼンチン代表のキャプテンのディエゴ・シメオネ(現アトレティコ・マドリード監督)のファールを受けエキサイト、後ろ蹴りをくらわしシメオネを倒してしまいます。
時間は後半開始早々のところ。
イングランドはこれからというタイミングで1人少なくなってしまいます。
その後延長まで粘るも、PK戦の末イングランドは敗退。ベスト16で姿を消すことになりました。
戦犯認定と大バッシングの日々
試合後、ベッカムのせいで負けたとイングランド中でバッシングの嵐。戦犯扱いです。
当時のデイリーミラー紙では
10 heroic lions one stupid boy
(10人の勇敢な獅子と1人の愚かな若者)
と揶揄されます。
世間ではベッカム批判ムードが巻き起こり、パパラッチの活動もエスカレート。中にはベッカム本人や家族に対して脅迫にも及ぶ者も現れます。
ワールドカップ本大会が終わった後の代表戦でもこの流れは続き、ベッカムが出場した際にはサポーターがブーイングを浴びせるなど、異様な状態が2~3年程続きます。
ちょっとやりすぎな感がありますが、実は相手がアルゼンチンだった事が影響しています。
「フォークランド紛争」
歴史の時間に聞いたことがあるかもしれません。
1982年にアルゼンチン沖にあるフォークランド諸島の領有権をめぐって行われた紛争の事です。
場所はこちら
海上交通の要所だった事もあり紛争に発展。
約3か月間に及ぶ紛争の結果、イギリス軍が勝利をおさめ島を実効支配しています。
現在に至るまで領有権問題は解決していません。
平たく言えば、アルゼンチンとイングランドは仲が悪いのです。
スポーツに政治を持ち込むのはタブーですが、そうもいかないのが国民感情。
あんなアルゼンチンなんかに負けやがって!
単純なライバル関係では無いのでとてもタチが悪い。
そんな背景があり批判がエスカレートしてしまったのです。
起死回生のフリーキック
98年の失敗はあったもののベッカム自身のクラブでの活躍は凄まじいもので、チャンピオンズリーグを獲得するなど輝かしいキャリアを歩みます。
当然、実力があるのでイングランド代表にも継続的に選出。2002年のワールドカップ予選も主力として戦い続けます。
そして迎えた2002年ワールドカップ予選の最終節、ホームのオールド・トラフォードでのギリシャ戦。
後半アディショナルタイムの時点で1-2のビハインド。
同時刻キックオフでグループ首位争いをしていたドイツはフィンランドと0-0の状態。
このままいけばドイツがワールドカップ出場権獲得、イングランドはプレーオフへ回るという厳しい状況に追い込まれていました。
そんな中ゴール前のやや遠め、FWシェリンガムが得たファールでフリーキックを獲得。
キッカーはベッカム。決めればワールドカップ、外せばプレーオフ。
そこで見せたフリーキックはこちら!
サポーターの不安な表情。何でもいいから決めてくれ!ってみんな思っていたことでしょう。
ゴール正面ですが、距離はかなりありました。
しかしキーパーの逆を突き、美しい放物線を描いたボールはゴールへ吸い込まれて行きました。
もはや芸術の域。
このプレーをこのしびれる場面で決め切れるのがベッカムのスターたる所以です。
喜びを爆発させサポーターの前に向かうベッカムは、この瞬間にアルゼンチン戦の事を国民のみんなに許してもらうことができたと思ったそうです。
試合はこのまま2-2で終了。ライバルのドイツも0-0のまま試合が終了し、イングランドは本大会出場権を獲得しました。
もちろん、ベッカムへの批判もこの試合を境に一切無くなりました。
その後、本大会では宿敵アルゼンチンを倒しベスト8まで進出。
日韓の気候に順応できないヨーロッパ勢やレフェリングに泣かされる強豪国が相次ぐ大会でしたが、大きな活躍を見せる事が出来ました。
これを超えるフリーキックと出会いたい
いかがでしたか?
私は好きなフリーキックを一つ挙げろと言われたらギリシャ戦のベッカムのフリーキックの話をします。
技術的にはこれを超えるフリーキックはあるかも知れませんが、このシチュエーションに勝るものは今のところ無いと思っております。
いつかこれを超えるフリーキックにお目にかかれると信じてますが 笑
皆さんもお気に入りのフリーキックを見つけてみてはいかがでしょうか?
【中古】デビット・ベッカム サクセスストーリー【1991-2007】 [DVD] 価格:4,980円 |
海外サッカーランキング
コメント