なぜJリーグは背番号フォントを統一したのか?

Jリーグ

選手、サポーター、スタッフ、クラブに関わる全ての人にとって大切な公式戦で使用するユニフォーム。
2021シーズンよりJクラブの背番号のフォントが統一されることになりました。
今回は統一に至った背景に迫りたいと思います。

背番号をとにかく見やすくしたい!

2020年9月に背番号のフォント統一がJ公式ホームページより以下でリリースされました。

視認性向上の取り組みについて】

これまでのネーム&ナンバーのデザイン選定には視認性を確保するための基準などが明確に定められておらず、観戦・視聴環境によっては背番号の視認が困難なケースも見受けられました。この度、ユニバーサルデザインを取り入れた統一デザインを採用し、使用するネーム&ナンバーとユニフォームとのカラーコントラストにも一定の基準を設けるなどの取り組みによって、Jリーグ公式試合全体の観戦・視聴環境の向上につなげていきたいと考えています。

【村井 満チェアマンのコメント】

「Jリーグオフィシャルネーム&ナンバー」の導入は、スタジアムでの観戦だけではなく、スマートフォンやタブレット端末等による様々な観戦・視聴方法が拡がっている潮流にあわせて、誰もがより選手を判別しやすい観戦・視聴環境づくりを推進していくことを目的としています。また、選手を覚えていただくきっかけのひとつでもある背番号を通じた、選手への興味・関心の拡大にもつなげていきたいと考えています。

Jリーグオフィシャルネーム&ナンバー導入について ~2021シーズンから全クラブの選手番号・選手名の書体統一を決定~【Jリーグ】:Jリーグ.jp (jleague.jp)

詳細はリンクより飛んで確認してください。

おおざっぱに言えば、観戦方法や視聴環境が多様化した事により見やすくしたかったという事です。

この決定はサポーター内で波紋を呼んでいます。
特に反対や撤回を求めているクラブのサポーターは以下でしょうか。

ジェフ千葉、清水エスパルス、東京ヴェルディ

クラブ発足当初から同じフォントを使い続けているオリジナルフォントを使用している、お金を掛けリブランドして努力をしている・・・
理由はこんなところです。理由もごもっとも。

背番号に愛着をもちアイデンティティとしているクラブやサポーターは多く、私が当該サポーターだったとしても「なんだかなぁ」という気持ちになります。
そんなに見やすくしたいなら、視認性が低いクラブだけ改善すればいいじゃん!ってなると思います。

ですがリーグ側がそんな各クラブの事情をわかっていない訳がない。ホームページでは掲載されていない統一にした理由をもう少し掘り下げます。

それぞれの目線での背番号の見やすさ

①サポーター目線
スマホ、タブレット、PCなどテレビ以外の視聴環境が増えてきた。
つまり小さな画面で見る機会が増えた。

これは公式HPに書いてある通りです。
実際に名古屋グランパスは一足早く2020年シーズンの最終節で統一フォントを使用したユニフォームを着用していました。TV、タブレット、スマホすべてで確認しましたが個人的には見やすいと感じました。

②審判目線
背番号が見にくいと正しい判定を下せない恐れがある。
例)カードの出し間違い、退場者の取り違え

神戸で言えば、他の選手がファールをしたのに背番号を見誤りイニエスタがファールをしたと勘違いされ、そのまま退場処分になってしまったとしたら・・・
試合のプランが大きく変わってきますし、次節の試合プランも大きく変わります。
VARがあれば判定の修正は可能ですが、サッカーの試合で大切な「流れ」が大きく止まります。
審判は即断即決しなければならない職業。見やすいという事は審判には大切なことなのです。

ちなみに私も草サッカーや練習試合等で審判をやった経験がありますが、背番号が黒色の赤色ビブス(よく見かけるパターンです)は全然見えません。
紅白戦であれば自チームなので「誰」というのをすぐに判別できますが、普段見慣れていない他人の場合は背番号を見ないと正直「誰」か認識出来ないと思います。
審判にとっても背番号の視認性はとても重要です。

③選手目線
背番号が見にくいとマーク、受け渡しがしにくい
選手同士が認識しにくい

サッカー経験者であれば分かると思いますが、選手は試合中に背番号をよく叫びます。

マークの受け渡し時「10番行った。渡すよー」とか
セットプレーのマーク確認時「俺5番につく!○○は7番について!」とか
CBやGKのコーチング時「□□は7番の中切って!○○は行くな!9番見て!」とか

試合中はこんな感じでコミュニケーションを取り合っており、背番号が無いとめっちゃくちゃ試合しにくいです。

また味方の背番号の見やすさも大切で、プレー中の一瞬の中で背番号で「誰」かを認識し、パスを出す選手を選択する事は多々あります。

敵、味方関係なく選手にとっても背番号の視認性はとても重要です。
一瞬の判断や動きで結果が変わるサッカーという競技にとって背番号の見えにくさは競技の公平性を損なう可能性があります。

5色のみ 色指定の理由:見えている世界は人それぞれ違う

今回のフォント統一の中で、背番号の色も指定されました。
「白」「黒」「青」「赤」「黄」の5色です。

ですがサポーターの意見の中に
「見やすさ重視でフォントを統一するのはわかるが、色まで指定するとは・・・。クラブカラーに合わない事もあるんじゃないか?」
というものがありました。

Jリーグ側の調査によると背番号の配色で最も多いのは「白」「黒」 でこの2つで77%を占めるとの事。
次点で「青」「赤」「黄」と続くそうです。
チームカラーと相反する色を使うためにほとんどが「白」「黒」がチョイスされるようです。
このため上記5色でほとんどのチームは事足ります。
事足りますが、それは色指定をする理由にはなりません。
色指定にはもっと重たい理由があります。

今回の背番号統一を進めるにあたり、Jリーグはカラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)とタッグを組み検討を進めてきました。

NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)
私たちは、社会の色彩環境を色覚(色の感じ方)の多様性に対応、改善してゆくことで「人にやさしい社会づくり」をめざすNPO 法人です。

色には「情報をわかりやすくする」という役割があります。例えばハザードマップや案内図のように、即座に情報を読み取り行動に移すことが求められる場面では、見分けやすい色分け(配色)は大いに役割を果たします。しかし、人の色覚は遺伝や加齢などにより共通な感覚ではありませんそのため、社会の色覚の多様性に対応していない配色は、混乱を招く要因になることがあります。

私たちは、みんなにとって見分けやすいデザイン「カラーユニバーサルデザイン(略称 CUD)」の考え方を普及する活動をします。CUDOはそのための組織です。


CUDOとは – 多様な色覚に対応したデザインと社会の改善 特定非営利活動法人カラーユニバーサルデザイン機構CUDO

色の見え方はそれぞれという事ですが、カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)のホームページに掲載されている以下のポスターを見てもらうのが一番早いと思います。

ピンク色の桜が白に見える人が居る事を現しているポスターです。
冷静に考えて、男性の20人に1人はかなり多いと思いませんか?

ちなみに私の友人にも色弱者の方が居ます。同じサッカーチームで共にプレーをしておりましたが、蛍光色系の赤や緑色のユニフォームは芝の色と同化して見にくいと言ってました。
一緒にサッカーのTVゲームをした際も蛍光色系の赤や緑色のチーム(アウェイユニフォームだと多いですよね)を使うと極端に弱くなりました。
本当に見えないと。
本人曰く、自分の色弱は程度が弱いと思うから日常生活はそこまで困ってないけど、一瞬の判断を必要とする時はやっぱり厳しい時があると言ってました。

色弱者の方は選手、サポーター、審判誰にでも存在しえます。
競技としての公平性を保つ、審判の質の向上、誰でも観戦できる競技にしたいというJリーグ側の想いから5色指定の結論に至りました。

ブランディング戦略としてのフォント統一

海外サッカー好きの方はご存じかもしれませんが、背番号のフォント統一は世界でも多く行われています。

ヨーロッパの主要リーグで言うと以下になります。
プレミアリーグ(イングランド)、ラ・リーガ(スペイン)、リーグアン(フランス)

これらのリーグは24時間世界各国で放映されており、「あ、今プレミアやってる!」とか「この試合はラ・リーガだ!」と一目見てわかるようにしています。
ラ・リーガに関してはもう一歩進んでおり、スタジアム内の色をチームカラーで統一するようにしております。
一目見てすぐに認識してもらう事をチーム単位で行っているのです。

Jリーグはアジアでの認知に力を入れておりますので、背番号のフォント統一は当然の流れかもしれません。私としてはJリーグがアジアで影響力のあるリーグになる事が、日本サッカー界の発展につながると信じているので背番号のフォント統一はOKの立場です。
ただ、個人的には選手名の記載も必須にして欲しいなと思いましたが・・・。
これからのJリーグに期待です。

苦渋の決断だった

色々と書きましたが、背番号のフォント統一と色指定においてはJリーグの担当者の方々の悩みや葛藤がたくさんあったみたいです。
詳細は以下動画を参照ください。少し長めの30分です。

クラブの歴史や個性ももちろん大事ですが、選手、審判、サポーター、全ての方にとって見やすい、公平なリーグにしたい
そんな決断を私は応援したいと思います。


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夜のランチタイムキックオフ

少年サッカーからワールドカップまですべてのサッカー・フットボールを愛しています。
もっとサッカーがうまくなりたい。
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