ラ・リーガでお馴染みのレアル・ソシエダ。近年は下部組織(カンテラ)から昇格してきた選手が多く活躍する魅力的なチームづくりで注目を集めています。
なぜクラブは育成力を高める事に成功しているのか?
結論から言うと、ソシエダのクラブの歴史とその周辺地域の歴史が大きな要因なのですが、今回はそんなソシエダの育成力の秘密を歴史の視点から紐解いていきたいと思います。
クラブ基本情報
正式名称:Real Sociedad de Fútbol レアル・ソシエダ・デ・フトボル
愛称:La Real ラ・レアル
設立年数:1909年
本拠地:バスク州サンセバスティアン
場所はこちらです↓↓
ホームスタジアム:エスタディオ・アノエタ
※スポンサーシップ契約により、現在はレアレ・アレーナ(Reale Arena)
CL決勝も出来るレベルの大スタジアムです。
外観はこんな感じ↓↓
なお、レアルとはスペイン語で王室の~と言った意味。
1910年、当時のスペインの王様アルフォンソ13世がサッカー好きだった為にレアルの称号を授けられました。
ちなみに「レアル」の称号を付けたチームはレアル・マドリードを始め数多くありますが、初代はこのソシエダです。この為リスペクトを込めて愛称が「ラ・レアル」となっています。
当初「レアル」の称号は箔が付く感じだったのですが、アルフォンソ13世がサッカー好き過ぎてどんどん「レアル」の称号を各クラブへ与えた為にレアル乱立の状態になってしまいましたw
ノリ良すぎ。
今となっては「レアル」そのものに大きな意味はなくなりましたが、チーム名そのものから成り立ちがわかるのはスペインサッカーの歴史の深さといって良いのではないでしょうか。



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安心と信頼のソシエダ産 出身選手
ソシエダのカンテラはとても優秀なのですが、具体的にどんな選手が出身なのでしょうか?
ここ30年ほどを中心に選手を並べてみます(カッコ内はソシエダでの所属期間)。
GK
■アシエル・リエスゴ(2002-2010)
現レガネス所属、ブラボが来るまでは長く守護神として君臨。
DF
■アイトール・ロペス・レカルテ(1997-2007)
クラブのレジェンドの1人。元キャプテン。兄はバルサでも活躍したルイス・マリア・ロペス・レカルテ。
■ミゲル・フエンテス(1987-2001)
元ソシエダ会長。引退後ソシエダ会長就任も多額の負債を抱え経営がうまくいかず。2部降格と共に辞任。
■ハビエル・ガリード(2003-2007)
期待の若手SBだったが2部降格とともにクラブの財政難もあり、2007年にマンチェスター・シティへ移籍。
■アグスティン・アランサバル(1992-2004)
元スペイン代表SB。98年W杯、00ユーロにも出場。お父さんも長くソシエダで活躍。親子レジェンド。
MF
■ホセ・マリア・バケーロ(1980-1988)
元スペイン代表OH。クライフ監督時代(ドリームチーム)のバルサのキャプテン。
■ハビエル・デ・ペドロ(1993-2004)
元スペイン代表SH。02W杯出場。プレースキックの名手。02-03シーズンの2位躍進の原動力の1人。
■ホセバ・エチェベリア(1994-1995)
元スペイン代表。ライバルのアスレティック・ビルバオのイメージが強いが、ソシエダのカンテラ出身。
■シャビ・アロンソ(2001-2004)
元スペイン代表。ソシエダ→リバプール→レアルマドリード→バイエルンと渡り歩いた説明不要のスター。父ぺリコもソシエダのレジェンド。兄もソシエダでチームメイト。現アーセナル監督のアルテタとはご近所の幼馴染。
■アシエル・イジャラメンディ(2008-2013, 2015- )
現ソシエダメンバー。一時レアル・マドリードへ移籍もソシエダへの強い想いから復帰。
FW
■アイトール・ベギリスタイン(1982-1988)
元スペイン代表。愛称は「チキ」。ソシエダで活躍後にバルサでも大活躍。晩年は3シーズン浦和レッズにも所属。
■アントワーヌ・グリーズマン(2009-2014)
フランス代表のエース。サンテティエンヌのトライアルを受けてる際にソシエダスカウトの目に留まりカンテラへ入団。
■ミケル・オヤルサバル(2015- )
現役スペイン代表。現ソシエダのエース。東京五輪世代であるが既に200試合以上のリーグ戦出場を記録するスペイン屈指のFW。
代表クラスだけをピックアップしましたが、これだけ輩出しているクラブは世界を見渡してもそうそうありません。
世界中から若手を集めるような事はしないクラブなので、カンテラはほぼ地元選手だけで成り立っています。
裏を返せばクラブの育成力がかなり高いと言えます。



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バスクの歴史が育成力を高くした!?
なぜここまで育成力が高いのか?
それにはバスクの歴史とクラブの歴史が大きくかかわっています。
スペインという国を大雑把に言うと、各地方ごとに分裂していた国が合体してできた国家です。
国の中心は首都マドリードなのですが、それぞれの地方に権限を多く持たせており自治州という形を敷いています。
中でもバスク州はマドリード側に弾圧されたり抑制される事が多くあった歴史を持っています。
バスクには「バスク語」という独自の言語があるのですが、それを禁止されていた時代もありました。
(20世紀の話です。それほど昔ではありません)
現在も個々人の思想の程度はあれど、スペインから独立したいと思うバスクの住民は一定数います。
こうした背景からバスクのサッカークラブはバスク人だけで構成しようという動きが出てきます。いわゆる「バスク純血主義」です。
純血主義の最たる例といえばライバルのアスレティック・ビルバオです。
バスク人、バスク育ち、血縁者にバスク人が居るなど・・・
細かい規定はありますが、バスクにルーツが無いと入れないクラブです。
そしてソシエダも設立当初からビルバオと同じ純血主義を貫いてました。
アスレティック・ビルバオの純血主義については過去記事で書いておりますので以下をご覧ください。

ソシエダはその後1989年に純血主義と決別し外国人選手を受け入れ始めるのですが、約80年間この体制を貫き続けていました。
「外から取ってくる」という事がずっとできないチームだった為、元々から育成には力を入れておりノウハウは脈々と受け継がれていく事になります。
その後2002-2003シーズンに外国人選手をチームの中心に据え2位に躍進。
コバチェビッチ(セルビア)、ニハト(トルコ)、ベスタ―フェルト(オランダ)、カルピン(ロシア)など各国代表をそろえ、シャビ・アロンソ、アランサバルなどカンテラ出身選手との融合をすることで魅力的なチームを作り上げました。
翌シーズンはチャンピオンズリーグに出場。
CLではグループリーグを突破するもリーグ戦や国内カップ戦との両立に苦しみ低迷。15位でシーズンを終えます。
ここから結果を残せないシーズンが続き、主力の外国人選手も移籍、2006-07シーズンに2部降格。
2008年には財政破綻によりクラブ破産という憂き目に会います…。
CL出場から5年で破産。外国籍選手へ支払っていた高年俸が最終的にはボディブローのように効いてしまったのです。
こうした経緯により2008-2009シーズンから若手主体のチームに大きくシフト(年俸を払えないのでそうせざるを得なかった)。
2009-10には1部昇格を勝ち取り、2021年現在も1部を戦い続けています。
外国籍選手を受け入れる事で躍進したチームですが、チームが苦境に立たされた時に残ってくれる外国籍の選手はそう多くありません。その後の転落も早くなってしまったのです。
降格・破産という苦い経験もあり、カンテラ中心にシフトしたチームは1部昇格後も安定した戦いを続けています。
今ではスタメンはほぼバスク育ちの選手。バスク外のスペイン人や外国籍選手はスポットで補強する程度にとどめ、基本はカンテラから上げてきた選手を中心に戦っています。



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レアル・ソシエダの今後
レアル・ソシエダの今後ですが、おそらくカンテラ重視の方針は変わらず続けていくと思われます。
降格・破産の経験もあるので、大型補強にはかなり慎重になるはず。
ポイントは
・CL、EL等のヨーロッパカップ戦の出場権を得たときに戦力と選手層を維持し続けられるか?
・ビッグクラブからの引き抜きをいかに食い止められるか?
以上の2点です。
その為に以下のジレンマと戦っていく事になります。
ヨーロッパカップ戦を戦う際は試合数が多くなるので選手層を厚くしておきたい。
でも出場権を得たシーズンは若手が躍動したシーズンである事が多い。
よってビッグクラブから引き抜きに合いやすい。
こうしたジレンマをここ数シーズンは
・カンテラが優秀な選手をめちゃめちゃ多く供給している
・バスク地方独特の一体感により選手がとどまりやすい
この2点でうまくバランスをとって対処してる気がします。



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まとめ
ソシエダの育成力が高いのは?
・バスク地方のスペインからの弾圧の歴史
・約80年間の純血主義による育成ノウハウの蓄積
・国際派チームでの成功と降格・破産のクラブ史
こういった背景から世界でも屈指の育成クラブになりました。
今回の記事でレアル・ソシエダというクラブの根底にあるものが一人でも多くの皆さんに届けば幸いです。



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